電子カルテの功罪~デジタルとアナログの狭間で考えた~
先日、不整脈のアブレーション治療目的で近隣の専門病院に紹介させていただいた患者さんが、不安そうな面持ちで診察室に入ってきました。
私「あ~、Kさん、〇〇病院受診して、どうでした?」
患者さん「先生、、、私、不安なんです。」
私「え?何か不都合な点がありましたか?やっぱりアブレーションは怖いですか?」
患者さん「はい、、、(施術をうけることが)怖いのもありますけど、この担当の先生に命預けていいのかどうか不安なんです。。。」
私「そうですか、こわ~い説明を受けたんですね。。。」
患者さん「いえ、そうじゃないんです。」
私「???」
患者さん「担当の先生が、診察中、ずーっと電子カルテばっかりみて、こちらを向いてくれないんです。。。。」
私「!!!」
患者さん「私の質問にも、淡々と答えるだけで、なんだか不安になってきて。。。。」
私「な、なるほど。。。」
私が紹介したのは、不整脈科の部長さんの初診外来でした。
キャリアも十分にあり、お人柄も温厚で、冷静に物事を判断してくれそうな、「医師の目から見れば」非常に頼りがいのある専門医です。
実際に腕は確かでしょうし、安心してお任せできると思うのですが、患者さんは我々医療従事者とはかなり異なった角度から
その部長先生を見ている、という事実に改めて驚きました。
おそらく部長先生も、自分のやるべき仕事を一生懸命遂行しているのだと思います。
患者さんの話を聞き、それを電子カルテに打ち込み、情報の漏れがないように詳細に記録していく。。。。
医師としては当たり前の仕事を無駄なく行っているつもりだったと思います。
ただ一つ、彼の落ち度は、「患者さんに向き合っていない」
この1点だけで、患者さんは不安になってしまうのです。
どんな高名な医師であろうと、有能な医師であろうと、外来で「人対人」の真剣勝負をするときに、そっぽを向いて電子カルテと仕事をしているようでは、やはり臨床医としては減点なのです。
もちろん、医師の本来の目的は「疾病の治療を高い成功率で遂行する」ことですから、どんなに愛想がよくても腕が悪ければ話になりません。
ですが、クライアントである患者さんは、生身の人間である以上、医師に人間らしい暖かみを求めるのです。
どんなにコンピューター管理が進み、デジタルな世の中になっても、人間の感性には最後までアナログな部分が残るのですね。
私も気を付けなければ、と反省させられるお話でした。