コロナ、コロナ、と騒がれるようになって、もう3か月ぐらいがたちます。

緊張感が緩んだり、締まったり、マスコミ報道に右往左往したり、落ち着かない日々が続きます。

 私たち一般開業医は、患者さんと一番近いところにいるわけですが、このところ「自分は新型コロナウイルスに感染しているのでは?」とご心配になり、お電話をいただくことが増えてきました。

発症初期や軽微な症状のかたは、症状だけで感冒などと鑑別することはできません。

レアな症状である「味覚・嗅覚障害」があれば疑いやすいですが、私自身はそのような訴えの患者さんに遭遇しておりません。

それどころか、大半の医師が「ホンモノの新型コロナウイルス感染患者」を診察する機会がありません。

また、PCR検査以外の採血や胸部レントゲンでも、なかなか診断困難です。

胸部CTでは特徴的な画像がでるとのことですが、これは一般開業医での実施は、設備がありませんので到底無理な話です。

では、新型コロナウイルス以外の疾病の確定診断ができるかといえば、特定の疾患に限られてきます。

例えば、「咽頭痛と発熱」⇒「のどを見ると、扁桃腺が真っ赤に腫れて、膿がついているので、急性扁桃炎」

このように、疾患に特徴的な症状がある場合は、かなりの確実性をもって診断できます。。

ところが、「咽頭痛と37.5度前後の発熱が2日間。軽い咳。」⇒「のどをみると、それほど赤くない。うーむ・・・・コロナ感染否定できない。」

となるわけです。

前述したとおり、新型コロナウイルス感染の経過において、普通の風邪や気管支炎と見分けがつかないことが往々にしてあります。

確率からいうと、新型コロナウイルス感染以外の疾患である確率のほうが、はるかに高いのですが、今の状況では「ゼロ」とは言えません。

まるで、「確率はかなり低いけど、誰かに必ず当たるロシアンルーレット」に参加しているような状況です。

ひやひやしながら、引き金を引かなくてはなりません。

 

このように、臨床症状でトリアージしていくには、あまりにも難しいのが新型コロナウイルス感染診療の難しいところなのです。

そして、診断の一助になるのが「PCR検査」です。

もちろん、感度は70%ぐらいといわれてますので、「陰性」=「感染してない」というわけではなく、結果を盲信することはできません。

ですが、今のところはPCR検査で、「まず新型コロナウイルス感染ではない可能性」を評価したいのが、開業医そして患者さんの心情でしょう。

 

ところが、今はそれはかなり困難になってきました。

なぜなら、「PCR検査のキャパシティに限りがあるから」です。

これは、検体を処理する検査機関のキャパシティではありません。

鼻腔で検体を採取する医療機関でのキャパシティなのです。

例えば、八尾市の場合(4月18日現在)は、感染症対策室を設けているある民間総合病院が検体採取の大半を請け負っています。

ところが、現時点でも保健所内の相談センターからでないと依頼ができません。

先日、保健所に現状を聞くと、「一人のPCR検査に1時間かかる」との返答をいただきました(!)

検査を室内で行っているので、患者さんの移動や検査後の室内消毒などで、どうしてもそのようなことになってしまうとのことです。

韓国や欧米のような、「ドライブスルー検査」「簡易テント内での検査」は、採用していないとのことです。

もう一つの公立病院は、感染症対策室すらありませんので、民間病院でさばき切れないときに依頼を受け、救急外来の医師が検体採取をしているとのことです。

これでは、八尾市で1日に行えるPCR検査はせいぜい10検体そこらぐらいでしょう。

つまり、現在の八尾市で行われているPCR検査は、「中等症~重症の患者を新型コロナウイルス感染なのか、そうでないのか。」を鑑別するために絞って行うしかないのが現状で、「軽症者の新型コロナウイルス感染のスクリーニング」目的に使用することは、実質困難だ、ということなのです。

よって、保健所相談センターが、患者さんの選別をするしかない状況なのです。

 

ですが、かといって「ああ、仕方ないね」で、終わらせていいものではありません。

 

東京の一部の区(墨田区、葛飾区)では、簡易テントなどを使用したPCR検査を現実化し始めています。

諸外国の例を見ても明らかなように、こうなることがある程度予想されていて、1か月以上の準備期間はあったはずなのに、まだ一部の自治体しか実際に現場に反映されていないのが、日本の現実です。

この現状に業を煮やした日本医師会は、「行政がぬるいなら、我々が」との意気込みで、医師会主導での「PCR検査センター」設置を提案しています。

先日、八尾市医師会に問い合わせたところ、公式なものではないですが、「八尾市医師会長と保健所長が、協議に入っている」との返答をいただきました。

もちろん、これが現実に実施されるまでには、紆余曲折が予想されます。

検体を採取するのは医師ですから、リスクを考えると高齢の医師会員の先生に依頼することはできません。

私たち30~50代の医師会員が現場に出る必要があります。

おそらく協力拒否をされる先生方もいらっしゃるでしょうし、むしろそれが多数派だと思います。

でも、社会的にニーズがあり、誰かがやらなければならず、それが医師しかできないのであるならば、我々が手を挙げなければなりません。

これについては、様々な反応、風評が生じることが予測され、クリニック経営に多少なりとも影響が出るかもしれません。

ですが、医師を志した原点にもどり、純粋な気持ちで、自分のやるべきことを考えたいと思います。

つづく。

医療法人癒美会