長期の夏休みを頂きました。
みぞぐちクリニックをご贔屓にしていただいている患者様には大変ご迷惑をおかけいたしました。
8月25日(月)からは通常に営業しておりますので、よろしくお願いいたします。

さて今回のお題は少々難しい内容になりますが、曖昧な理解で終わっているところでもあります。シンプルですが、光治療(IPL治療)とレーザー治療の比較についてまとめてみました。
(写真は、この秋から当院で導入予定のIPL治療機器である、キュテラ社オーパスです。)

【IPL治療とレーザー治療の特徴】
IPL治療は、広い波長域(500~1200nm)を発するフラッシュランプを使用します。
治療に有効な波長をピークとする光の複合波長を患部に照射します。
一方、レーザーは機種ごとに発する波長が単一に固定されています。(例えば、ルビーレーザーは694nm、アレクサンドライトレーザーは755nm、Nd;YAGレーザーは1064nmなど)
光治療もレーザー治療も、ある波長をもった可視光線、近赤外線をメラニンなどの標的にあてるということについては同じ原理に基づいた治療法です。
レーザーは単一波長なので、比較的まっすぐ「線」のように進み、光は様々な波長の集合体なのでやや広がって進むという大きな違いがあります。
言葉の響きから「レーザーのほうが、強くて効きそう」なイメージを描きがちですが、必ずしもそうではありません
その性質を生かしたそれぞれの長所、短所を理解することが大切です。

1)IPL治療の長所
 

 ①圧倒的に施術後のダウンタイムが短く、マイルド
シミに対するレーザー治療後は「かさぶた」の形成がほぼ必発のため、2週間程度パッチなどで覆う必要があります。
さらに「かさぶた」がとれたのちも、レーザー治療後によく起こる合併症である「炎症後色素沈着」のため、患部のシミがさらに濃くなったような印象になります。
色素沈着が完全になくなるまでには数か月を要しますので、患者さんにかなりの忍耐を強いることになります。コンシーラーでいくらか隠すことができますが、お顔の場合ですとお仕事をされている方は困ることが多いようです。
一方、IPL治療(当院採用のキュテラ社オーパスでは「ライムライト」というハンドピースで行います)では、施術直後であっても普段通りにお化粧や日焼け止めを塗っていただくことが可能です。4,5日して「マイクロブラスト」と呼ばれるメラニンのかすが浮き上がってポロポロと取れていきますが、ほとんど目立つことがありません。
周りに気づかれることがなく、お化粧もいつも通りにできて、「少しずつ、シミが薄くなって目立たなくなる」のが最大のメリットです。

②お肌の質感向上、美白効果、小じわ減少、皮脂腺減少などの効果が期待できる
部分的なシミの治療がメインであっても、ライムライトによるIPL治療を顔全体に施すことにより、熱作用による真皮コラーゲン増生が刺激され、皮膚の弾力性がアップします。
また小じわが軽減し、さらにお肌の美白感が生まれて明るい印象になります。(これが「フォトブライト」と言われる理由です)
脂性肌の方は、皮脂腺の栄誉血管が選択的に破壊されることにより皮脂腺分泌が減少し、皮膚のテカリが軽減されます。
ニキビ肌の方は、アクネ菌が出すポルフィリンに光が反応して、活性酸素が発生し殺菌効果が生まれます。

③脱毛効果はレーザー治療とほぼ同じ
IPL治療でも永久脱毛は可能です。当院採用のキュテラ社オーパスではハンドピースを「プロウェイブ」に交換して脱毛を行います。
このプロウェイブは光脱毛機器でありながら、米国FDAから永久脱毛可能な機器であるという認可を受けています。
毛根の幹細胞を熱変性させて、働きをストップさせるには、600~950nmの光を選択的に照射します。特にレーザーのように「単一波長」である必要はありません。
例えば、アレクサンドライトレーザーは755nmの単一波長ですが、キュテラ社プロウエィブのAモードでは770nmにピークをもつ狭い範囲の光波長を用いますので、ほぼ同じことを毛根幹細胞に対して行っていることになります。
逆に、IPL治療では波長に幅がある分、皮膚のメラニンの多さに合わせて波長調節が可能です。キュテラ社プロウェイブではA、B、Cの3つモードがあり、それぞれピークの波長が異なっており、肌の色に合わせて選択ができます。
これにより、過剰なエネルギー発生を抑え、表皮の火傷などを防ぐことができます。
また、発毛にはサイクルがあり、休眠状態になっている毛根にはレーザーもIPLも効果がありませんので、どちらの治療法でも永久脱毛には3~5回ぐらいの施術が必要です。
レーザーだから回数が少なくて済むわけではありません。
施術時間の比較においては、ハンドピースの接触面の面積がIPL治療機器の方が圧倒的に大きいため、より短時間で広範囲の脱毛が可能となります。

2)IPL治療の短所

①期待する効果を得るまで、施術を重ねる必要がある
「少しずつ、目立たなくする」ことの裏返しですが、シミ、そばかすなどに対するIPL治療は1回で終わることはありません。少なくとも3~5回は必要です。

②濃いシミ、大きいシミには無効例が多い
IPL治療では、メラニン過多の濃いシミ、大型のシミには十分な効果を期待することができません。効果を上げるには、IPL治療に合わせてトレチノイン、ハイドロキノロン、ビタミンC外用薬、サプリメントなどの併用が必要となります。
ただし、かさぶた発生や炎症後色素沈着などの副反応を許容できるなら、ルビーレーザーによる除去の方が効果は確実です。

③脂漏性角化症、AMDには無効
シミ(老人性色素斑)とよく似た「脂漏性角化症」や真皮層にメラニンが沈着している「後天性メラノサイトーシス(AMD)」にはほとんど効果がなく、こちらはレーザーの適応となります。

よく検討してみると、「すべてにおいて、IPL(光)治療よりレーザー治療の方が勝る」という考え方は、誤りであることがわかります。
正確には「IPL治療、レーザー治療それぞれに長所・短所がある」という理解が正しいようです。

「なんとなく、レーザーの方が効果ありそう」と思われるのが一般の方々の傾向のようですが、IPL治療とレーザー治療の長所、短所をよく理解した上で、自分の病変や希望にあった治療を選択する必要があります。

そして何よりも大切なのは、機器だけでなく、病変を正しく診断し、適切な治療を選ぶ、医師の判断です
「シミ」に見えるものが、単純な老人性色素沈着(日光黒子)なのか、ADMなのか、肝斑が混在していないか、など重要なポイントがいくつもあります。
レーザー治療でも光治療でも、照射エネルギーやパルス幅などの選択が非常に重要です。

教科書的な知識は最低限必要ですが、それに加えて、学会参加によって得られる最新の知識や経験を積んだ先生方から発せられる治療現場の「生」の声などを積極的に吸収して、常に勉強していくことが患者様の利益につながります。

さて、当院では、まずフォトブライトの「ライムライト」と光脱毛の「プロウェイブ」から導入いたします。
来年には、ルビーレーザー、Nd:YAGレーザーなども揃えていく予定です。

また、スキンケアの重要性も考え、CDトレチノイン(従来のトレチノインよりも低刺激、同効果)、ハイドロキノン、ルミキシルなどの採用や、エレクトロポレーション(電気的穿孔)によるプラセンタおよびビタミンA、C、E導入などもラインアップしていきます。

さらには、抗酸化サプリメントを各種取り揃えて、患者様各人の目的、嗜好に合ったご提案をさせていただく予定です。

今秋から始まる、「美容皮膚科&アンチエイジング外来」にご期待ください。
 



 

医療法人癒美会