11月も後半。いつもの年と比べると温かい気候が続いておりますが、もちろん寒さは日ごとにつのる今日この頃ですね。

 

さて、我々にとって冬といえば、「ああ、今年もインフルエンザの季節がやってきたかぁ」と日々忙しくなることに身構える季節です。

ところが、昨年からインフルエンザの流行はピタリと止まり、例年患者数のピークである1~3月はそれらしき患者様も来ぬままシーズンが終わってしまいました。

もちろん、それは当院だけではなく、日本中、いや世界中で報告された現象でした。

 

昨年夏、日本より一足早く冬を迎えた南半球の国々では、全くインフルエンザが流行りませんでした。

私はこの状況を知って「おそらく、インフルエンザは今年流行らないよ」とスタッフに話しておりましたが、全くその通りになりました。

 

昨年のシーズン前には、「新型コロナとのダブル感染もあり得る」とか全くのデマっぽい情報が流れておりましたが、感染症の勉強をしたものであれば、そのような状況になりえないことぐらい簡単に予想できました。

ただし、マスコミの流す情報は嘘でも「真実」になりやすいので、例年よりもインフルエンザワクチン接種希望者が増えることとなりました。

日本に3社あるワクチン製造メーカーも、ここぞとばかり増産体制をとったおかげで、需要にこたえることができたわけですが、それが功を奏してインフルエンザが流行しなかったわけではありません。

皆様も気づいているとは思いますが、新型コロナ対策そのものがインフルエンザ流行を阻止したのです。

 

ご存知の通り、インフルエンザワクチンは国民の大半が接種するワクチンではありません。

これまでのデータでは、人口の30~35%ぐらいの接種率のようです。

そのような接種率の低さですから、当たり前のように毎年大流行します。

ましてや、インフルエンザワクチンの有効率は40 ~60% と言われていますので、なおさらです。

 

よく言われていたのが、「インフルエンザワクチンでは、流行は防げない。かかった時に症状が軽くすむ可能性がある。」ということです。

まさしくこれが真実であって、感染と流行を防ぐのは、新型コロナ対策とおなじ「手洗い、うがい、マスク」です。

感染力が新型コロナの3~4分の1ぐらいであるインフルエンザであれば、新型コロナ対策をするだけで、インフルエンザの流行どころか感染予防にもなってしまうのです。

さらに言えば、もし感染しても、よく効く薬が何種類もあります。

正直申し上げて、現在、インフルエンザワクチンは健常者には不要です。

 

毎年、厚生労働省はインフルエンザのシーズンごとの発症状況を1週間ごとに報告しています。

感染者の報告義務のある国内5,000の医療機関で1週間に何人インフルエンザの患者が見つけられたのがわかります。

今年は2021年11月8~14日までの1週間で、28人のインフルエンザ患者が報告されています。

昨年2020年の同時期は、24人でした。

ちなみに例年同時期がどうだったかというと、2018年11月は2,588人、2019年11月は9,107人でした。

昨年、今年は200~400分の1の発症人数です。

 

ご存知の通り、通常であれば流行のピークになる1月の定点観測患者数も、今年は2ケタ代でずっと推移し、流行することはありませんでした。(ちなみに2019年のピークには、1週間で20万人もの患者さんが定点観測されています。)

我々が今まで通り、新型コロナ対策を行いながら通常の生活をする限り、インフルエンザの流行は阻止され、発症する確率も極めて低くなるのです。

 

今年はワクチンが少ないとのことで、「ワクチンが打てなかったら、どうしよう」とご心配の方も多いかもしれませんが、上記の理由で、「昨年同様、インフルエンザの流行はなさそうなので、ワクチン打たなくてもあまり心配ない」と考えてよいかと思います。

もちろん、「そうはいっても、心配。どうしても接種がしたい。」とういう方も当然いらっしゃいます。

ワクチン供給はひっ迫しておりますが、なんとかご予約分は確保するようにワクチンメーカーと交渉しますので、予定通りの接種ができない状況であっても、しばらくおまちください。

よろしくお願いいたします。

 

医療法人癒美会