皮膚科

皮膚には人体を
外的環境から守る、
重要な役割があります
私たちの体の一番表面にある臓器、「皮膚」は常に外的環境の影響を受けており、私たちの体を守ってくれています。
また内面の状態、特に免疫・アレルギーシステムの異常が最も現れやすい場所でもあります。 年齢を問わず、皮膚病は一般的であり、皮膚科専門医でなくとも対処すべき疾患の一つです。
当院では総合診療の一環として、脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、慢性および急性蕁麻疹、尋常性ざ創(ニキビ)、尋常性疣贅など多種多様な皮膚疾患に対処可能です。
皮膚科と美容皮膚科の違い
-
皮膚科
皮膚科では皮膚疾患治療を目的として、患者様のお悩みに対応します。薬剤を使った治療が主流であり、抗アレルギー剤やステロイド薬、ビタミン剤や漢方薬などを用いて、症状の改善や緩和に努めます。
-
美容皮膚科
美容皮膚科では、保険診療以外の治療方法も含めて、お肌のトラブルや加齢に関係するお悩みなどに対処します。対応するのは、しわやしみ、たるみやニキビ跡などを含むので、疾患以外も改善、解消の対象です。
皮膚科で扱う主な疾患
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは、頭皮や額の生え際、顔など、皮脂の分泌が多い部分にできやすい湿疹のことをいいます。
軽症例では、ヒルドイド軟膏などの保湿&抗炎症作用のある塗布剤で対処可能ですが、中等症から重症になるとステロイド塗布剤が必須となります。
ステロイド塗布剤は効果不良の場合、「コムクロシャンプー」を積極的につかうとコントロールが良好になります。
治療にはよく反応しますが、再発を繰り返すこともありますので、気長に付き合う必要がある病気でもあります。
-
症状
脂漏性皮膚炎になると患部が赤くなり、表皮がカサカサになって剥がれ落ちるため、フケが増えます。脂漏性皮膚炎で出るフケには乾いたうろこのようなものがある一方、湿り気と脂気があって黄色っぽい場合もあります。痛みはほとんどないことが多く、あっても軽微です。悪化すると浸出液がかさぶたのようになることもあります。
-
治療・予防法
脂漏性皮膚炎の治療では症状を見ながらステロイド外用薬や抗真菌外用薬を選択、あるいは併用します。
治療によって症状が治まったことで薬剤の利用をやめると、再度症状が出ることもあるため、再発予防の意識を持つことも重要です。皮膚を清潔に保つことや心身のストレスを減らすことなど生活習慣にも目を向けてください。
アトピー性皮膚炎
幼少期から成人に至るまで、アトピー性皮膚炎の患者様は多くいらっしゃいます。
幼少期のアトピーは、成人になるまでに治まることもしばしば経験しますが、環境因子、遺伝的因子などが複雑に関係する疾患のため、完治が望めない例もあります。
西洋医学的な視点からは、免疫抑制剤およびステロイド塗布剤の使用は必須です。
長期的使用により、ステロイド特有の副作用の発現率が高くなりますので、最近では非ステロイド系の免疫抑制剤の軟膏の使用頻度が高くなっています。
ステロイドの使用量をなるべく減らすため、漢方薬を併用することもしばしばあります。
-
症状
アトピー性皮膚炎の症状には、皮膚の赤みや湿疹、皮膚の乾燥やはがれ、かさぶたや強いかゆみなどがあります。また、皮膚のバリア機能が低下することで通常よりもかゆみを感じやすくなることで、患部を搔き破ってしまい、さらに状態を悪化させるケースが多く見られます。さらに、アトピー性皮膚炎はいったん状態が良くなってもまた悪化する例が多いのも大きな特徴です。
-
治療・予防法
アトピー性皮膚炎の治療は、薬剤の処方とスキンケア、悪化因子を探して対策する、という3本柱で進めます。いったん状態が良くなっても再度悪化することもあるので、「治った」と言いにくい場合がありますが、寛解が期待できる疾患でもあります。薬剤の利用方法や薬のやめ時などは専門的判断が必要なので、個人の判断で治療を進めたり中断しないように気をつけてください。
接触皮膚炎
接触皮膚炎は、刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎に2分されます。
刺激性接触皮膚炎は、物理的な刺激(こすれ、強い圧力)や、皮膚に損傷を与える酸・アルカリなどの化学物質に触れることで起こる炎症です。
アレルギー性接触皮膚炎は、皮膚から侵入した化学物質に免疫機能が働き、その物質をアレルゲンとする抗体が作られてアレルギー反応が起こり、アレルゲンが再び皮膚に接触すると炎症の症状が現れます。一般的にアレルゲンが体内に入って数時間から2~3日程度でかゆみを伴う紅斑、丘疹、水疱などが見られます。
-
症状
接触皮膚炎の症状としては、痛みや患部の発赤、ヒリヒリしたかゆみや盛り上がりのある発疹などが代表的です。また、状態が悪化すると湿疹や水疱ができたり、肌が乾燥してガサガサになったり、皮がむけたりすることもあります。手の平などは皮膚が厚いため症状が出にくいですが、原因物質に触れた手でほかの部位に触れると症状が出る場合もあるのでご注意ください。
-
治療・予防法
接触皮膚炎に対処する場合、まず原因を特定したうえでその物質を除去することが重要です。当院では、原因物質を特定するためのプリックテストやパッチテストを行っています。治療に関しては薬剤の処方が中心で、最も多く出すのはステロイド外用薬です。また、かゆみが強い場合は抗アレルギー剤の内服薬をステロイド外用薬と併用することで症状の解消や緩和を目指すこともあります。
ニキビ(尋常性ざ瘡)
ニキビは、毛穴(毛のう)を中心に起こる炎症性の皮膚疾患です。思春期になるとホルモンの影響で皮脂の分泌が増加し、毛穴に皮脂がたまって詰まることで、皮膚が盛り上がった「白ニキビ」ができます。この毛穴内にはアクネ菌という常在菌が存在しており、菌が増殖すると炎症が進み、「赤ニキビ」と呼ばれる状態になります。膿を伴うこともあり、白ニキビと赤ニキビが同時に見られることも少なくありません。
-
症状
ニキビの初期段階では、皮膚の表面に「面ぽう」と呼ばれる小さなふくらみが現れます。面ぽうは毛穴に皮脂が詰まってできたもので、身体の中でも比較的皮脂の分泌が多い顎や額、頬や胸、背中などの部位にできがちです。また、面ぽうの内部にアクネ菌が増えて炎症が起きた場合、赤ニキビ(赤みのある発疹)や黄ニキビ(膿を持った発疹や膿疱)に発展します。
-
治療・予防法
ニキビの治療は、保険診療によるものと自費診療によるものがあります。
まず、保険診療によるスタンダードな治療を行います。
塗布剤、ビタミン剤、漢方薬、整腸剤などの多種多様なバリエーションがあります。
すべての方に効果的な治療法はなく、いろいろと試してみて有効な治療法を探していきます。 保険診療で完全によくなる方は、患者様全体の6~7割ぐらいです。
イソトレチノイン(ビタミンA誘導体)内服やレーザー照射などの自費診療で改善が得られる場合があります。
尋常性疣贅
尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)とは、いわゆる「イボ」の医学的な名称です。角質内パピローマウイルスの増殖によって起きる病変で、表面はざらざらしています。年齢性別によらず発生し、形状は円柱形や不規則、色は灰色、褐色、黄色、灰黒色などさまざまで、多くは直径1cm未満です。ひざやひじ、顔や指などに見られますが、足の裏に発生するものは難治性です。
-
症状
尋常性疣贅は皮膚の隆起が起こる病変であり、形状やできる部位はさまざまです。また、ほとんどの場合、痛みやかゆみなどの症状はありません。形状的に大きくなったり、数量的に増えたりすることがありますし、治療後に再発することもあり得ます。また、ウイルス性の病変なので免疫で治る例もあります。
-
治療・予防法
一般的な皮膚科では、液体窒素などで除去しますが、当院では「モノクロロ酢酸」と呼ばれる強い酸で治療します。液体窒素治療よりも回数はかかりますが、痛みがほとんどないので、小児の治療には最適です。
角質の厚い中にウイルスが増殖した症例(特に足底)では、サリチル酸(スピール膏)を貼付してメスでの削除を繰り返します。
また、保険適用外ですが、角質増殖を抑える塗布剤や、ウイルスそのものの増殖を抑える塗布剤も有効なことがあります。通常の治療で治らないケースは、ロングパルスヤグレーザーを繰り返すことで治癒に至る例もあります。
尋常性乾癬
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)は、皮膚の炎症性疾患で、赤みを帯びた盛り上がり(紅斑)に銀白色の鱗屑(うろこ状の皮膚)が重なって現れるのが特徴です。免疫異常により皮膚のターンオーバーが通常の数倍に速まり、皮膚が過剰に作られることで症状が生じます。
-
症状
発症には遺伝的素因やストレス、感染症、薬剤、外傷などが関与します。肘や膝、頭皮、腰などによく見られ、かゆみを伴うこともあります。慢性的に経過し、悪化と軽快を繰り返すのが一般的です
-
治療・予防法
治療は、外用薬(ステロイドやビタミンD3製剤)を中心に、重症例では光線療法や内服薬、生物学的製剤が使われます。適切なスキンケアや生活習慣の見直しも重要です。
急性・慢性蕁麻疹
蕁麻疹(じんましん)は、皮膚に突然かゆみを伴う膨疹(赤く盛り上がった発疹)が現れる疾患で、通常は数時間以内に消失するのが特徴です。蕁麻疹は発症からの期間によって「急性」と「慢性」に分類されます。
-
症状
急性蕁麻疹
数時間から数日、長くても6週間以内に自然に治まるタイプで、原因としては食品(甲殻類、卵、ナッツなど)、薬剤、感染症、ストレス、寒冷や圧迫などの物理的刺激が挙げられます。急性では原因が比較的明確なことが多く、原因物質の除去と抗ヒスタミン薬の内服が基本的な治療です。
慢性蕁麻疹
6週間以上にわたり繰り返し発症するもので、原因が特定できないことが多く、自己免疫やアレルギー以外の機序も関与していると考えられています。
-
治療・予防法
急性では原因が不明のこともまれではありません、原因がわかれば、原因物質の除去と抗ヒスタミン薬の内服が基本的な治療です。
慢性蕁麻疹の治療は主に第2世代抗ヒスタミン薬の継続的な内服で、効果が不十分な場合には増量や他剤の併用、生物学的製剤(オマリズマブ)などが選択されることもあります。
酒さ・赤ら顔
酒さ(しゅさ)は、顔の中心部に赤み(紅斑)や毛細血管の拡張、小さなブツブツ(丘疹・膿疱)などが現れる慢性の皮膚疾患です。中年以降の女性に多く見られ、特に鼻や頬、おでこ、あごなどに症状が集中します。乾燥やほてり、かゆみ、チクチク感を伴うこともあります。
-
症状
原因ははっきりしていませんが、皮膚のバリア機能の低下や、紫外線、温度変化、ストレス、アルコール、香辛料などの刺激によって悪化することが知られています。
近年では、皮膚常在菌(特にデモデックスという毛包虫)や、免疫の異常反応も関与していると考えられています。 -
治療・予防法
治療は、症状のタイプに応じて行います。赤みや毛細血管拡張にはロングパルスヤグレーザーやIPL治療が用いられ、ブツブツが目立つ場合は保険診療による抗菌薬外用剤(ロゼックス)、内服(ミノマイシン・ビブラマイシン)、自費診療でのアゼライン酸クリームなどが処方されます。刺激を避けるスキンケアも重要で、洗顔や保湿には低刺激性の製品を選ぶことが勧められます。
酒さは慢性的に経過しやすいため、根気よく治療と生活改善を続けることが大切です。
足白癬、爪白癬、体部白癬
白癬(はくせん)は、皮膚糸状菌というカビの一種によって起こる皮膚の感染症で、感染部位により「足白癬」「体部白癬」「爪白癬」などに分類されます。
- 足白癬は「水虫」とも呼ばれ、足の指の間に皮むけやかゆみ、水疱ができるタイプ(趾間型)、足の裏が乾燥して角質が厚くなるタイプ(角化型)、かかとや足縁に水疱が生じるタイプ(小水疱型)などがあります。高温多湿の環境や、長時間の靴の着用で悪化しやすいです。
- 体部白癬は「たむし」とも呼ばれ、顔や体、腕や足などに赤く円形の発疹ができ、周囲が盛り上がってかゆみを伴うのが特徴です。接触感染によって広がることがあり、ペットからの感染もあります。
- 爪白癬は爪が白く濁り、厚くなり、もろくなる病気で、水虫を放置していると爪にも広がることがあります。見た目の変化だけでなく、歩行時の痛みや他人への感染源にもなるため、早期の治療が重要です。
-
治療・予防法
治療は主に抗真菌薬を使用します。足や体の白癬には外用薬が中心ですが、爪白癬や重症例では内服薬(テルビナフィン、イトラコナゾールなど)が必要になります。完治には数週間から数か月を要し、症状が消えても一定期間は治療を継続することが大切です。再発防止には清潔・乾燥を保つことが基本です。